Web広告(レップ)のマーケティング社畜の備忘録

日々のニュースや雑感を備忘録的にまとめます。

【メディア】メディアの苦悩 28人の証言

電通新聞局→CCI→JIAAと、正に日本のメディア業界を広告側から支えてきた長澤さんの著書。

表題にある様に、インタビュー形式で各メディア関係者と現状・課題・未来を語っています。

この本の中では、特に一貫した議題も回答もありません。各メディアの方々が、自分達の立ち位置で感じている事を長澤さんとお話されています。

私自信、メディア側と広告側で仕事をしてきましたので、非常に示唆に富んだ本でした。

下記に、簡単ですが本のまとめを記載致します。

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【メディアには”信頼性”が非常に重要である】

新聞は、凋落するばかりと言われているが、一方で取材網は圧倒的に強い。

情報の真偽を確かめ、言葉に落とし込む為のコストは、ネットメディアと比較にならない。

インターネットでは、ステマ問題をはじめとした「広告とコンテンツの曖昧さ」が問題になっている。

また、twitterを初めとしてデマも多く見られ、メディアとしての信頼性は低いと言わざるを得ない。

その背景には「PV至上主義」「乱暴な自己責任論」に代表される利益主義がはびこっており、その結果が「ウェブはバカと暇人のもの」でも言われている様な状況に陥ってしまっている。

また、ウェブメディアは広告審査も甘い部分があり、ステマ問題や楽天優勝時のセール問題は、それが露呈した結果である。

〈所感〉

マスメディアは情報を自ら取得し、それにフィルターをかけて研ぎ澄ました形で世の中に出していきました。

一方、ウェブは玉石混合の情報をそのまま世の中に出し、間違いであろうともPVがとれれば問題無し。

今、世の中はウェブを面白がっていますが、将来的な成長という観点でみると健全では無く、まさしく帰路に立っていると思われます。

 

【マスメディアへの接触ポイントを作るネットメディア】

ヤフーは「ヤフーニュース」がポータルのメインコンテンツ。

そのニュース記事自体は、全て新聞社・雑誌社から提供されており、ヤフーは記事と読者をつなぐ橋渡しをしている。

また、上記のスタンスから基本的には論説を行っていなかったが、ヤフー個人やビッグデータ解析により、別の個人やデータに論説を代替させる仕組みも出来上がっており、徐々にマスメディアの領域にも進行をしている。

一方で、配信社からすると「コストをかけてつくった情報を”ご苦労さん”と言われて吸い上げられている様な気もする…」という意見もある。

更に現在では、スマートニュースの様なアグリゲーションメディアも増加しており、直接の1次情報では無い接し方が増えている。

〈所感〉

結果的に、マスメディアが囲っていた領域をネットメディアが侵攻しているものの、そこと組まない限り更に状況が悪化する、という形になっています。

しかし、その選択はユーザーがしたものであり、最早不可避な流れです。

既存マスメディアも、従来のビジネス構造が特殊であった(=権益に守られていた)部分もある為、ネットメディアを含めた”オープンな”ビジネスモデルの構築を目指すべきでしょう。

 

【よりオープンに、より恣意性を持つ様になる情報】

ウェブの発達により、個人がメディアになる時代が来ている。ホリエモン津田大介が自らメルマガを発行して売り上げをたてている。

また、中国では国からの検閲を逃れる為、微博(中国版twitterSNS)で地方政府の悪事を発信する等、従来では出来ていなかった個人の発信を行っている。

このオープン化は、発信者にとどまるだけでは無く、発信内容も同様だ。

東浩紀氏は、ネットは「下半身」を見せるメディアだと語る。

これはポルノの事だけではない。「上半身」をマスメディアのみの時代に語られた、綺麗に言語化された情報だとすると、「下半身」は右傾的や排他的な言語等、従来マスで語られる事の無かった内容が見える様になった、という事である。

 

上記でも挙げたが、ネットメディアで流行しているのは「キュレーション」「アグリゲーション」メディアであえる。

それらは裏を返すと、自ら一次情報に接さず他人がまとめた情報を見ているという事だ。

そこには何かしらの恣意性が働く場合もあり、その事を頭に入れて接しないといけない。

〈所感〉

これからも情報は爆発的に増え、ネットには玉石混合の情報が広がります。

それらは、マスメディアで見た事が無い様な(悪い意味で)刺激的なものもあります。

情報処理能力は限られている為、我々はそれらを「キュレーション」された形で受け取る様になりますが、そこには知らず知らずの内に操作されている可能性もあります。

そうした事態を防ぐ為にも、一次情報を確認するやソースを確認するといった、メディアリテラシーを個人がつけなければなりません。

また、恣意性を持たない信頼性のあるメディアが、マスメディアと良好な関係を築く事で組織として存続できる様なマネタイズ手法も、議論を進める必要があります。

現在はPV至上主義。信頼性が無くとも、PVが取れればマネタイズが出来てしまう状態です。

スマホの普及もひと段落し、今後こうした議論をマスメディアを巻き込みながら進めていき、安心・安全なスマホメディアが出来る事を願います。

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