商社の隆盛から見る、レップ業の今後の価値について
今更ながら、ブログを備忘録的に書こうと思います。
東京のIT系企業(レップ業)で働く者です。
現在、”アドテク”と呼ばれるWeb広告のテクノロジー発達が凄まじく
今まで人の手を介して行われていた事が、徐々に機械に置き換わってきました。
その中で叫ばれるのが「レップ不要論」です。
それに対抗すべく、レップ業態は今後どうあるべきか?という事を考察したく思います。
1:そもそも、レップ業は何をしているか
このレップ業の業態をそもそもご存じない方も多いと思いますので
簡単に整理したいと思います。
商流で言うと「媒体社と広告代理店の間に入り、取引をまとめる」のがレップ業です。
4マスと呼ばれるテレビを中心としたマスメディア全盛期には
存在しなかった業態です。
インターネットが発達し、無数のWebメディアが出てきた事を契機として現れました。
その理由は、代理店としてはWebメディアが無数に存在する為、媒体毎の情報を扱うのに手間がかかる。その割には手数料収入が少なく、高人件費の総合代理店では扱いづらい為、媒体社との間に入り、情報の一元化が求められた為です。
また、媒体社も少人数からなる企業が多く、各代理店への販売活動を担う事が難しい為、レップ会社に依頼する事で、販売面での課題をカバーできました。
代理店から広告主の課題をヒアリングし、 媒体毎に異なるメディア指標(ユーザー層や1PVあたりの価格等)を考慮したメディアプランを作成します。
媒体社へは掲載原稿を期限通りに入稿し、価格交渉等も行うといった事が仕事内容でした。
2:激変したレップ業を取り巻く状況
「Web広告の受給者の間に入り、適切につなぐ」これがレップ業の役割でした。
しかし、その業務はテクノロジーの発展により、機械にとって代わろうとされています。
例えば、売買活動。これは、ADNW(アドネットワーク)やDSP(デマンドサイドプラットフォーム)やSSP(サプライサイドプラットフォーム)によって、取って代わろうとされています。
※参考サイト:http://dmlab.jp/adtech/dsp.html
また、媒体毎の属性情報。これもDMP(データマネジメントプラットフォーム)等の登場により、cookieデータやリアルの購買情報を含めた、より深いユーザー情報を取得し、システム上で売買活動に利用できるようになりました。
この様に、アドテクノロジーが発達する事で起きた出来事は「枠から人」への変化という事です。
つまり、レップ業が販売していた「広告枠」が、もっと効果的な「(個人を特定しない)人」に何を表示させるか、という風に変化してきました。
ここで求められる事は「テクノロジーを如何に使い、費用対効果を高められるか」という運用技術です。
実際、サイバーエージェントやOPTといったネット専業の広告代理店は、既に運用代理の広告提案へとシフトをしています。
こうした中でレップ業の会社が、単純に運用代理業へ手を伸ばす事は危険です。
今までに全く知見が無い、運用業務には優位性が無く、先述の代理店と比較しても勝ち目は薄いと思います。
3:商社には、仲介業からどの様に脱却したか
かつて、この状況と近しい事態に陥いりながら復活を遂げた業種があります。
それが「商社」です。
バブル崩壊後の不況と、コスト削減を目的とした仲介業者(商社)の中抜きにより、商社は苦しみました。
しかし現在、日本の商社は復活を遂げ、グローバルに活躍をしています。
行った事は【事業分野の選択と集中】【資源エネルギーへの事業投資】【川上~川下への事業分散】が挙げられると思います。
それぞれを抽象化して、目的を考えると以下になるでしょう。
選択と集中…既存ビジネスのコスト削減/利益最大化
資源エネルギーへの事業投資…新しい収益の柱を作る
川上~川下への事業分散…ノウハウを周辺事業にも展開
既に成功している分野は、極力絞りつつ、新規への投資を行う。
そこで成功したものは、仲介だけでは無く、川上~川下までシナジーが得られる領域を広げました。
この事から、レップ業が得られる示唆は無いでしょうか。
4:ネイティブアドへの注力による、テクノロジーの代替が効かない広告販売活動
川上~川下の話を、Web広告に変更すると、以下になると思います。
川上(媒体企画・広告枠作り)
川中(仲介)
川下(広告主への販売)
この中で、私は川上・川下業務を含め、ネイティブアド という形式を、もっとレップ業が川上・川下含めコンサルティングし、広めるべきだと考えています。
現在のWeb広告の課題としてアドテクノロジーの発達により、広告単価が下落しているという点があります。
また、仲介業務のテクノロジー進化は起こっているが、それ以外の「枠」としての進化は、ここ5年ほど起こっていません。(ようやく、動画広告が日の目を見る?)
そこで現在注目されている広告形態が「ネイティブアド」です。
これは、メディア毎で普遍の従来広告枠では無く、コンテンツとして書かれる広告です。
ユーザーにとって受け入れやすい形で編集される為、メディア価値を壊さないで提供ができます。
参考:http://www.infobahn.co.jp/special/native_ad
この考え方自体は新しい物では無いが、ようやく業界にも浸透してきました。
14年度以降、この形の広告が媒体にも作られると考えられる一方で、リンク先はただのセールスページだったりして、一貫性の無い文脈になってしまっている事も多いです。(Gnosyとかですね。)
また、代理店側からしても、各メディアを熟知していない為、どの様に広告主側の訴求したい事を伝えるべきかが分かりません。
今まで各媒体社との付き合いがあり、特徴を熟知しているレップ業態だからこそ、ネイティブアドに取り組む優位性があるのでは無いかと思います。
媒体社には、適切なネイティブアド商品の制作について提言を行い、代理店には媒体毎の文化を理解しつつ、広告主の意図を翻訳して掲載します。
媒体社と代理店の業務範囲(川上~川下)までを、ネイティブアドという事業に投資する事で、この冬の時代を切り抜けられないか、と考えます。
非常に長くなってしまいましたが、レップ不要論を打破する為に、媒体社と代理店の間に立つ者としての矜持をもって、単なる中抜き業者にならない発展をしていきたいと、強く思います。